二つの初勝利~アルテミス北海道対福岡ギラソール~①アルテミス編

アルテミス北海道
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2025年6月5日。アルテミス北海道は株式会社Wizに事業譲渡したと発表した。要は資金力のある、新しいオーナーを迎えたということだ。その背景など詳しいことは社長自らが語っているのでお読みいただくとして、

アルテミス北海道新体制始動! Wiz山﨑社長が目指す姿「みんなに担いでもらえる存在に」 | バレーボールキング

自社の女性社員比率も高く、女性スポーツを支援したいという思いと、地域に貢献したいという思い、という中でアルテミスといううってつけのチームに気づいた、というところだろう。私もこの会社はかつていた会社で取引があったので知っているけれど札幌をはじめ全国に拠点があるし、札幌のオフィスも最近できたビルに入っていてそこそこ従業員も多い印象。もしかしたら選手の雇用もしているのかもしれない(なにせ本体で1000人近く従業員がいる企業だ)。

地方のチームを地元企業だけで運営するのには、どうしても資金力(資本)の点で限界がある。その点では東京資本の会社が地方にチームを持つことに魅力、そして意義を見出してもらうことが必要。そのモデルケースにアルテミス北海道がなるのかもしれない。そんなうってつけのパートナーと出会えたのは何より、一斉退団があってもチームを残し続けてきたからだ。一勝どころか一セットもなかなか取れなかったり、観客も激減して、心ない言葉にもさらされ続けてきた一年があったからこそ、今回の出会いがあった。

強力なパートナーを得たアルテミスは、補強面でもリガーレ仙台を退団していた杉浦文香選手やカノアラウレアーズ福岡から長尾のどか選手を獲得するなど、昨シーズン途中から杉浦選手同様仙台から加入していた渡邉優選手も含め実績のある選手を揃えた(開幕後には倉敷アブレイズから谷口沙弥選手も加わった)。さらにWizは意欲的な施策を打ち出してきた。それが「ホームゲーム全試合道民無料招待」というもの(一部指定席を除く)。

上述の記事でも社長の発言としてこう書かれている。

では目下、この一年間は何をするのかというと会場を満員にすること。(中略)無料招待を活用しながら2500名収容のアリーナを満員にする。ここが一つのチャレンジです。(中略)目標は集客人数と熱量。そして1年やってみて、SVリーグに上がるか否かを決めていきたいと思っています。

バレーボールキング「アルテミス北海道新体制始動! Wiz山﨑社長が目指す姿「みんなに担いでもらえる存在に」」より

なにせ昨シーズンのホームゲームは平均257人で100人台も半数近くあっただけに、まずはそのポテンシャルを調べたいということなのだろう。果たして無料でも道民は来てくれるのか…。もしそれだけ関心が高いのであればSVリーグ加入を目指してもいいのかもしれない…。いわばそのテストマーケティングとして、入場料収入を無視して、さらにチケットをバラまくというよりはいわば親会社が招待する形にしたのだろう(ちなみに誰でも入れるというわけではなく、事前登録が必要。単なるバラマキではない)。

さらには2500人規模の北ガスアリーナ札幌だけでなく1万人規模の真駒内セキスイハウスアリーナでも開催するなど、意欲的な施策が相次いで発表された。さらには女子チームならではということか、ロゴと共にユニフォームもピンクに変更し、公式サイトも一新された(個人的には色こそ変わったもののチームロゴとマスコットがそのままだったのは、過去からの継続性という点でうれしかった)。

そして。
同年8月6日。選手の契約更新や入団発表のリリースが相次ぐ中で、そのトリを飾るように発表されたのがこれだった。

廣瀬 未佳選手 入団のお知らせ | アルテミス北海道 オフィシャルウェブサイト | Vリーグ女子バレーボールチーム
日頃よりアルテミス北海道への温かいご声援...

廣瀬未佳選手復帰───。あの、一斉退団したメンバーが、たった一人ではあるがチームに戻ってきたのだ。一斉退団の実情はわからないが、その中からたった一人だけ戻るというのは勇気がいったのではないだろうか。それでも戻ってきてくれた。だから、とてもうれしかった。断絶されたあのチームと今のチームが一本の線でつながった瞬間だった。

さらにいいニュースは続く。同年10月15日。Vリーグの中で将来的にSVリーグ参入を目指すチームが集まるSV.LEAGUEの下部リーグ「SV.LEAGUE GROWTH」のSVGライセンスの予備審査を通過、2026/27シーズンからの参入が見えてきたのだ。つまりそれはSVリーグに入る意思があるということ。制度が異なるので一概に比較できないが、一度手放したSV準加盟クラブを再び手に入れた、といっていいだろう。

一年前とは打って変わってポジティブなニュースにあふれた新・新生アルテミス。チームは、そして現地の雰囲気はどうなっているのか…。気づけば11月に決めた遠征の日程を指折り数えるようになった。