第二セットも取ったアルテミスはこのまま行くかと思ったが、ギラソールも巻き返して2ー1で第四セットに。流れを変えたのは、途中出場の杉浦文香選手と渡邉優選手のリガーレ仙台コンビだった。杉浦選手はブロックを決めただけでなく何よりサーブが効果的で(効果率29.2)、渡邉選手は決定率47.6とアタックがことごとく決まって、主導権を奪い返した。ここは青島ヘッドコーチの采配が的確だった。一言で言えば経験に賭けた、と思った。無理もない。だって、リーグ戦で勝利した経験のない選手ばかりなのだから。勝つことを知っている選手に託したということだろう。


だが初勝利の壁は高く、ギラソールも粘り第四セットも形勢が何度も逆転し23-23からいったんはセットポイントを奪われてしまう。だがなんとか追い付いてデュースに。何度も審判団の協議が行われるなど一進一退の攻防はそこでも続いたが、最後はアルテミスが逃げ切った。
SVから分離されたVリーグが誕生して二シーズン目。それは同時に、アルテミスがいったん解体されて再編されたのと同じ歴史だった。だから、昨シーズン0勝のチームはこれが新Vリーグでの、二年越しの初勝利となったのだ。




私は今までバレーボールの試合を見ていて涙を流したことはない。伝えようとして撮るのに夢中になっているからだと思う。今目の前で起きていることは何か。それに対し自分はどう感じているのか、それをどういう形(構図)で伝えるのがいいか。だけれど、この試合は途中で目がちょっと潤んだ。

なぜかというと、昨シーズンさんざん見てきた、レギュラー選手たちの悔しい表情が、この日は歓喜の表情ばかりだったからだ。その対比にグッと来た。特にこの初勝利の瞬間で真っ先に駆けだしている控え選手が、昨シーズンのレギュラーだった岩見花選手と工藤綾乃選手というのがまた…

だから初勝利の瞬間は、アルテミスファンではない私でも泣き出すんじゃないか…とも思ったけれど、それはなかった。この瞬間を伝えなきゃ、ということに頭がいっぱいになっていたのもあったけれど、代わりに号泣している人(笑)がいたからだ。


ああ、昨シーズンは選手もつらかったけれど、青島コーチ(当時)もつらかったんだな…と思った。一斉退団したチームにこの人が来てくれて、本当に良かった。




そして記念すべき一勝目の記念撮影に、背番号1として中心で収まったのはリガーレ仙台から移籍してきて今日活躍した杉浦文香選手だった。北海道出身でもなく縁もゆかりもなかったと思うけれど、間違いなく彼女にとって輝ける場所を見つけたのではと思う。かつてのチームに比べ道内出身者比率は下がっているけれど、道外からやってきた選手が力を発揮して盛り上げていく、というのも立派なチームのあり方だ。


北海道という大地は、冬の雪や寒さなど、自然環境の過酷さと向き合い続けてきた。北海道以外からの各地からも人が集まって、一から切り開いてきた大地なのだ。
だから。
これをいったらアルテミスファンの方は怒るかもしれないけれど、あのV3で優勝争いをしていたチームより、今の方がアルテミスらしいと私は思う。

福岡ギラソール編に続きます
