二つの初勝利~アルテミス北海道対福岡ギラソール~②ギラソール編

福岡ギラソール
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2020年の一連のコロナ禍は、実業団形式ではなく強力な後ろ盾のないチームにはより過酷だったろう。実際資金不足に陥ったシーキャッツは2020年12月からクラウドファンディングをスタートさせたのだが、私自身福岡にVリーグのチームができることを願っていたのでせめてもの支援を、と思って参加させてもらった。

だが、そのクラウドファンディング終了からわずか3か月の2021年4月15日に発表されたチーム名変更、全選手退団…。クラウドファンディングは地域リーグ遠征費や体育館使用料の補填など、チームの運営資金に使われるとうたっていただけに、その資金はちゃんと使われたのか、新チームとの関連性はあるのか、要は持ち逃げになってないか…を危惧するのは当然のことで、私は当時の運営に問い合わせたほどだ(なお、そんなことはなく納得のいく回答をいただいたことはここで伝えたい)。

それはさておき福岡春日シーキャッツは、カノア福岡(後にカノアラウレアーズ福岡に変更。以下カノア)となって再出発を図ることになった。一方でチーム名変更発表の翌日の4月16日には福岡ギラソールのインスタが立ち上がった。これが事実上の福岡ギラソール誕生と言ってもいいだろう。しかもそこに投稿されたチーム写真に載っていたのはシーキャッツのメンバーばかりで、本当の意味でのシーキャッツの後継チームはこちらなのではと思った人も多かったはずだ。

いわばカノアとギラソールの二つに分裂したシーキャッツだが、両チームは対照的な道を歩む。カノアはそのままスライドした森田亜貴斗監督の元、地元出身の熊本比奈選手(名前は熊本だが 笑、出身は福岡県朝倉市)の加入で戦力および発信力を強化しただけでなく、球団本部長に就任した森裕介氏によって事業面も強化、福智町への移転もあってVリーグ参入に突き進むことに。私自身も熊本選手に加えGSS東京(当時)と東京スリジエで見ていた賀谷明日光選手の加入で注目するようになった。こんな記事も書いているほどで、地方のチームがVリーグに参入するにはこういうことが必要、というモデルケースだと思った。

そして。元々抱いていた九州にV1の女子チームを、という思いは久光スプリングスの鳥栖移転で実現され、福岡を拠点とするチーム、もカノアが2023/24シーズンからV3に参入したことで叶ってしまい、自然と関心はこの両チームに向くことになった。なお現在カノアは体育館の建設まで決まっていて、Vリーグでの安定した地位を着実に築いている。収容人数の記載はないが、「Vリーグ基準に適合した」とあるので2000人以上となるだろう(イメージ写真を見ると3000人といったところか)。

ともに創造し、ともに未来へ―。福智の絆を育む、交流と躍動のアリーナ、新たな拠点の歴史が幕を開ける。 ふるさと納税 ふるなびクラウドファンディング
福岡県福智町がプロジェクトオーナーのクラ...

一方ギラソールは当然ながら一からできたチームとなるため、Vリーグを目指すには地域リーグで実績を積む必要があったし、地域リーグまで追いかけるほどの余裕はなかったので、どうしても私の頭から離れてしまった。ただ一度、ウチ(東レファンだ)にいた石川真奈選手が2022年に移籍加入したことがあり、そのときにふと思い出したことはあったし、アランマーレで見た赤星七星選手がギラソールどころかシーキャッツにいたことを後で知った。

とはいえ、福岡という、大きいけれどそこまで大きくない市場でVリーグのチームが二つできるのは難しいだろうな…と思っていた。ところがそんな予想はいい形で裏切られる。