二つの初勝利~アルテミス北海道対福岡ギラソール~②ギラソール編

福岡ギラソール
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

髙山侑花選手はギラソールのキャプテンであり、あの福岡春日シーキャッツから今でもチームに残り続けている───いや、厳密には後継チームはカノアなので残り続けているとは言えないのだが…ここはあえて───二選手のうちの一人。前日はスタメン出場だった彼女は、この日はいずれのセットも終盤からの、いずれもリリーフサーバーからの後衛の守備固めとしての出場だった(前衛に回ると交替して下がった)。

ふとスコアを確認した。2ー0で迎えた第三セット。得点は22-20。これはもしかして…。長年バレーボールを見て、撮ってきた身としてのカンが働いた。その結果がこれである。

勝利を決定づけるサービスエース。もしデュースにもつれ込んでローテーションが進めば下げられる。勝利の瞬間にコートに立てない…。そこまで考えていたのかは知る由もないが、長年チームに残り続けた彼女の執念が勝利を呼び寄せた。

試合はそのまま25-22で第三セットをモノにして3ー0のストレートで試合終了。結果的に私は二日連続で自分が陣取るサイドで、記念すべきリーグ初勝利の瞬間を目の当たりにすることができた。前日に続きその瞬間をきちんと撮らなければ…そう必死にカメラを向けていると、前日の初勝利とは別の光景が目に飛び込んできた。

号泣する選手…。前日のアルテミスが、涙ぐんでいだ選手はいたもののどこかカラッとした明るさを纏っていたのとは対照的だった(代わりに監督が号泣していたけど…笑)。これが何より、2018年からの7年間のチームの歴史を物語っていた。そして、POMインタビューも前日と違って号泣。涙にくれるインタビューというのはこれまでも見てきたけれど、ここまで号泣度の高いインタビューは初めてだった。POMインタビューも笑顔にあふれていたアルテミスとは完全に真逆だった

このPOMの選手が後に、試合後に号泣していた髙山選手と同じく福岡春日シーキャッツから残り続けている選手、大熊亜希選手だと知った。しかもシーキャッツ時代はキャプテンだった。後から入ってくれた若い選手たちが、チームを盛り上げ、初勝利に貢献してくれた…。そんな思いだったのだろう。前日のアルテミスが二年越しの初勝利だったのに対し、この二人にとってはいわば七年越しの、さらに言うと後継チームから二シーズン遅れての初勝利だった。

おっと、同じく七年越しのこの人を忘れていた。

そう、高尾監督は福岡春日シーキャッツ誕生時の監督でもあったのだ。だから当時のメンバー二人との歓喜の抱擁は、はたから見ていてもグッとくるものがあった。七年越しの初勝利。チームは福岡から遠く離れた街で、第一歩を踏み出した。

ちなみにその日のうちに帰福したチームだが、その夜に「Tarkey‘s Bar」も開店した。普段日曜は閉まっている店だが、この日はきっとささやかな祝勝会となっただろう。私も一緒に福岡に行ってマスターと打ち上げをして、この試合について語りたかったなと思った。

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2025年11月22・23日、北ガスアリーナ札幌46での二チームの初勝利。その背景には両チームともさまざまなバックボーンがあった。SVリーグ結成後、話題の中心はそっちになってしまったがVリーグの、レギュラーラウンドにもこんなドラマがあった。そして、そんな両チーム───しかもそこそこ思い入れがある───の初勝利に運良く立ち会えた私は、それを伝えるべきだと思った。

それから数週間後の2025年12月17日。この日、Vリーグの廃止が発表された。アルテミス北海道・福岡ギラソール共に、SV GROWTHライセンスの予備審査通過チームに名を連ねているので(2026年3月~4月に判定結果発表)、このまま行けばSVリーグ参入を目指して来シーズン以降も戦うことになる。それはつまりプロ化を視野に入れるということで、現状の社業と兼務するアマチュアにはならないということの明確な意思表示だ。この両チームはさらに前に進むことを共に選択した。

いつかこの、遠く離れている両チームの対決の舞台がSVになれば。そうなったら日本の女子バレーボール界は確実に規模が広がり、底上げされたと言えるだろう。この両チームにはそんな未来がかかっていると思う。

そう、未来───。両チームの初勝利と未来を祝福するかのように、あの日の試合終了後の札幌の空は見事なまでに晴れて、青かった。

前編のアルテミス北海道編はこちらから