それでも「最後は気持ち」だった~あの日の彼女と群馬グリーンウイングス~

群馬グリーンウイングス
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Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2025年12月29日の上尾市民体育館での埼玉上尾メディックス戦。群馬は3-0のストレートで勝ったのだが、試合後に彼女がロジャンスキ選手に謝っているような光景があったのだ。

何があったのかはわからないが、なんとなくではあるが自分のミスを帳消しにしてくれてありがとう、みたいに見えた。あまりこういう仕草(謝る)をする選手はいないから、妙に印象に残った。彼女はまだ自分に自信が持てていないのでは…。だから髙相キャプテンはああやって励ましたのでは…。

とまあ完全な推測ではあるが、髙相選手についてはPFU時代から長年見ている選手なので───そういう目配りと気配りができる選手だ───憶測ということでもないだろう。いずれにしてもこれで彼女の心に再びスイッチが入った。いや、火がついた。印象的だったのはその後、線審が集められるような微妙な判定があって、チャレンジに持ち込まれたとのことだ。

映像ではアンテナに当たったのが相手チームのブロックの後のように見えて、群馬側の得点だ!とチームは沸き立ったのだが、ブロックと同時に当たったと判断され得点が取り消されてしまったのだ。

長い中断時間、そしてHCがチャレンジレフリーに詳細を確認するような判定。流れを失いかねないシーンとなったが、そこで彼女はチームを下に向かせないよう「はい、次!」とチームメイトに向かって大きな声を出した。終わったことは仕方ない、引っ張らず次のプレーに集中しよう。

それは数分前に自分に同じようなことがあったから出た言葉ではないか。サーブミスをして落ち込んだけれど、キャプテンに励まされて再び前を向くことができた。だから、同じような状況のチームにもそうしよう。そして何より自分に言い聞かせよう。

まるで控えエリアに下がったキャプテンが乗り移ったかのように、彼女がチームを引っ張っていった。その後の、サーブに向かう姿も堂々としていた。

もう、その後の試合の結果は言うまでもないだろう。

勝利を、そしてPOMを呼び込んだのは彼女の熱い気持ちだった。これがいわゆる「最後は気持ちだった」になってしまう。でもそれはこの試合を通して強くなった、今までの自分を乗り越えるという彼女の確固たる思いによって生まれた気持ちではないか。

選手には誰しも、覚醒する瞬間がある。それは、自分に自信が持てなかった選手が、結果を出して確固たる、揺るぎない自信を手に入れる瞬間だ。でも、それは誰にでも訪れる瞬間ではない。努力して努力して、壁にぶつかってそのたびに凹んで、それを繰り返して、そして周りから認められて励まされて再び力をつけて乗り越えて結果を出すことによって生まれるものだと思う。

覚醒は選手一人の力だけでするものではない。今シーズンの群馬グリーンウイングスは、選手をフォローして手助けして、覚醒を後押しするチームに間違いなくなっている。

 

2026年1月11日。彼女───塩崎葵葉選手は間違いなく覚醒した。バレーボール選手のそんな瞬間を見届けられるのは、他チームファンであってもうれしいことであり、バレーボール観戦の醍醐味なのだ。