札幌の街にデンソーエアリービーズがやってきた日

デンソーエアリービーズ
all text and photographed by
Arimoto Kazuki(有本和貴)をフォローする

2021年11月20日。曇り空の札幌駅に入線しようと速度を落とす快速エアポートの左側の車窓から、北ガスアリーナ46が見えてきた。まだできて2年半、と真新しさが感じられるそのアリーナにふと目をやると駐車場に停まっている、チームロゴが大きく書かれたデンソーエアリービーズのチームバスが見えた。えっ、わざわざ西尾からチームバスを持ってきてくれたのか、と驚いた。

ついに、こういう日が来たのか…

5年前の2016年10月。転職活動をしていた私に提示された勤務地は、札幌だった。当初希望していた場所ではない、未知の地・札幌。どんな街なのかを調べる中、気になったのは「Vリーグ」があるかどうかだった。

2015年のW杯をきっかけにVリーグにのめり込んだ私は当時、木村沙織さんのラストイヤーということで慣れないカメラを片手に遠征を楽しみ始めていた頃で、Vリーグが生活の一部になり始めていた。だから、札幌でもVリーグ(女子)があるかどうか、は重要な要素になっていた。

まあ、バレーボールは雪が降ってもできる体育館スポーツだから札幌でも競技人口も多いだろうし、Vリーグ参入を目指すチームもあるだろう。札幌は大きな都市だから、札幌大会もシーズンに一回は開かれているだろう。

ところが。Vリーグ参入を目指すチームは札幌ではなく旭川に男子がようやくできたばかりで、女子はなかった。北海道バレーボール協会のHPだ、皇后杯予選結果だ、と見てみたが、チーム名で検索しても詳細な情報が出ておらずどうやら同好会のチームのようだった。参入を目指すチームがあれば普通そういう大会に出ている。つまりそういうチーム自体、存在しなかった。ならば、と過去道内で開催されたVリーグの大会を調べてみたが、女子は数年前に函館大会を開催していた程度(しかもそれは3年ぶりの開催だった)で、札幌はおろか、全道各地でも毎年開催されているわけではなかった。

うわあ、札幌はVリーグの匂いの全くしない街ではないか…。

転職が正式に決まり、そこから私は「しばらくこの光景も撮れなくなる」と惜しむようにシャッターを押し続けた。木村沙織さんのラストイヤーを2017年2月まで撮り続け、そして札幌に移った。

───

2017年3月に移り住んだ札幌の街に、Vリーグを感じさせるものはなかった(感じさせる街自体めったにないが)。地元メディアはコンサドーレやレバンガなど、地元のスポーツは野球以外でもそれなりに時間を割いて報道するが、当然そこにVリーグの時間はなかった。雪国であるということは、競技人口は体育館スポーツではなくスキーやスケートなどのウインタースポーツに流れるのだということにも気づいた。じゃあ遠征すればいいじゃないか、と思うだろうが、17/18シーズンが始まっても仕事の忙しさもあり、高い飛行機代を払ってまでVリーグを見に行く、という感覚にはならなかった。

東京と札幌は飛行機と電車の乗車時間は2時間半くらいだけれど、陸続きではないという疎外感がどうしても生まれる。本土から隔離されている感覚になる。東京のテレビ局が伝える桜の開花のニュースも、雪が降り積もる中で見ていれば現実離れしていた。この疎外感は、実際に住んでみないとわからないだろう。

こうして私はだんだんVリーグから遠ざかっていった。配信で見てみよう、という気には全くならなかった。私をつなぎとめてくれたのはフォロワーさんが投稿する写真だけだった。正月に福岡に行ったとき、調べると大分大会があったので、すがるように足を伸ばした。それが17/18シーズン唯一の観戦だった。なぜか木村沙織さんが講演会で札幌にやってきたときだけは、札幌に住んでいてよかったと思った。